Geogami’s blog

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高校生の進路と職業意識に関する調査-日本・アメリカ・中国・韓国の比較

「高校生の進路と職業意識に関する調査-日本・アメリカ・中国・韓国の比較ー」
を公開している。

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 高校生の職業観や将来の進路希望と予想、あるいは現在の職業経験などについて、日本、米国、中国そして韓国の4カ国の男女高校生を対象とした比較検討を行うために実施したもの一部の項目では、2006 年調査においても同様の内容を質問
していたため、その結果との時系列的な比較も行っている。
     
  調査内容はどれも興味深いが、自己肯定感や人生観の部分に興味が持てた。
「日本の高校生は・・・」といったイメージ語られるが、国際比較データからは
今の時代に生きる若者の傾向というグローバルな視点からの理解に近づける。
 
 以下、内容からの抜粋
 
調査内容
 
 
・進路希望
●進路希望を国別に見ると、韓国の高校生は「国内高レベルの大学」の希望が最も多く、「入りやすい大学」や「専門学校」への進学あるいは「就職」希望は非常に少ない。中国の高校生は「国内高レベルの大学」の希望も韓国に次いで多いものの、「入りやすい大学」への進学希望も約1割にのぼり、4カ国中最多である。米国の特徴は、他の3カ国ではきわめて少ない「短大」への進学希望が1割以上(13.1%)いることである。これは、4年制へのトランスファーが可能で学費も低廉なコミュニティ・カレッジ制度が普及しているためと思われる。一方、日本の大きな特徴は、他の3カ国と比べて「就職」と「専門学校」という、現実的で控えめな希望が際立って多いことである。また、他の3カ国と比べ進学希望が全体に低調なこと、留学希望がほとんどないことなども特徴としてあげられる。
 
 
・進路についての相談相手
●進路について相談する相手として「父親」をあげた高校生は中国が最も多く(74.2%)、「母親」は韓国が最も多かった(80.4%)。「友人」は米国が最も多く(68.1%)、「学校の先生」は日本が最多であった(44.6%)。選択率はそれらほど高くないものの、「先輩」では日本が最も多く、「塾の先生」では韓国、次いで日本が多かった。「祖父母」で米国だけが突出して多かった(28.6%)ことは興味深い。日本で「父親」の割合が4カ国中最も低かった(46.0%)点は気になるところである。
 
 
・父母の仕事に関する認知度
●父親の仕事内容をどれだけ知っているかを見ると、韓国で「よく知っている」が他の3カ国よりかなり高い(66.5%)のに対し、米国、中国ではともに4割台とそれほど高くない。それに比べて日本は肯定率が最も低く、韓国の半数(33.5%)にとどまった。それを男女別で見ても、米国で男子が女子より知っているという結果になったほかは、ほとんど差はなかった。
 
 
・進路を考える際の気持ちのあり方
進路について考える時の気持ちを尋ねた結果、「可能性が広がるようで楽しみ」の項目では米国が飛び抜けて高い肯定率を示した(89.6%)。
●それに対して、「将来どうなるか不安」では、韓国(83.9%)、日本(83.6%)が高い値を示した。この項目で最も低い中国(47.3%)の2倍近い肯定率であった。
 
 
・学校における進路指導のあり方とそれへの期待
●進路指導を受けた相手として多かったのは、日本が「担任の先生」と「進路指導の先生」、米国が「進路指導の先生」、中国が「担任の先生」、そして韓国が「進路指導の先生」であった。どれも7~8割の高校生が選択している。
●米中韓の3国では、「学校の心理相談員(カウンセラー)」という回答も一定程度あり、進路選択が個人の発達課題の一環として捉えられている状況がうかがえるのである。
●それに対して、日本の場合、「学校の心理相談員(カウンセラー)」という回答はほとんど皆無に近い(1.4%)。日本では進路選択が制度的な社会化の一環として捉えられ、あくまでも「指導」の枠組みの中に置かれていることがうかがい知れた。
●進路指導に期待する事柄について見ると、全体に米国の期待値の高さが目立つが、「自分が何に向いているか知るための学習」については中国が、「情報や資料の充実」については韓国が、それぞれ最多となっている。それに対して、日本の高校生はほぼすべての項目で低率である。「特に期待はしない」という否定的で醒めた意識のみ10.7%と、他の2倍水準で最多となっている。
●日常生活への評価については、ほぼすべての項目で米国の満足度の高さが際立っている。一方、中国の高校生は、「親との関係」「先生との関係」で高いほかは、全体に満足度が低い。韓国は、唯一、「学校の全体」というやや捉えどころのない項目だけは4カ国中最も高いが、「学校の雰囲気」「授業」「部活動」といった具体性のある項目での満足度は、その低さが目立っている。
●日本の高校生は「友人関係」「学校の雰囲気」「部活動」などで満足感は示しているものの、「先生との関係」「親との関係」そして何よりも「生活全体」への満足度が4カ国中最も低い。気になるところである。

 
・キャリア教育経験とその評価
●「学校でキャリア教育に関する授業を受けたことがある」という回答は韓国で最も多く、約6割、日本の普通科でも5割を超えている。中国の専門学科は4割を超えているが、普通科は2割を切っていて、普通科ではキャリア教育があまり行われていないことがわかる。
●キャリア教育が自分の進路選択にどのくらい役に立っているかを尋ねると、「参考になった」という回答は日本の専門学科で最も多く、9割弱にも達した。普通科も8割強の高い肯定率となっている。最も肯定率が低い中国の普通科でも7割弱に達していることから、各国とも学校のキャリア教育が高く評価されていることがわかる。
●キャリアカウンセリングを受けたことがあるという回答は、日本が4カ国で最も少なかった。これに対し、韓国は5割弱にも達している。キャリアカウンセリングの評価については、4カ国とも体験者はその効果を高く評価している(肯定率は8割前後)。特に日本の肯定率(普通科で80.6%、専門学科で84.6%)が高かった。
 
 
・アルバイト経験とその有効感
●過去一年間にアルバイトをしたことがあるという高校生は、米国で最も多く(43.9%)、日中韓普通科を大きく上回っている。中国の専門学科も4割が体験者である。日本の専門学科は3割程度で、普通科を9%上回っている。
●男女別に見ると、米中韓ではアルバイトの経験者に男子が多かったが、日本では女子が男子より1割も多いという特徴が見て取れた。
 
 
・進路と職業に関する自己認識
●進路と職業に関する自己認識について尋ねると、日本では「自分にはどのような能力・適性があるか知っている」の肯定率が1割にも満たず、4カ国で最も少なかった。先の結果から、日本の高校生が米中韓の高校生よりキャリア教育を多く体験していることがわかっているが、自己評価になると、日本の高校生は控えめになる傾向があると思われる。
 
 
・将来の職業希望
●「将来就きたい仕事」は国により分布の特徴が大きく異なっている(普通科のみ比較)。米国では、医師、建築家、スポーツ選手、自ら起業といった大きな組織に属さない自営的な職種で希望が多く、一般事務職、公務員、営業職といった被雇用職に対する希望が少ない。中国の高校生も、米国同様、医師、建築家、自ら起業などへの希望が多いが、一方で米国と異なり、法律家、企業の経営・管理職、財務税務関係の専門職、公務員の希望も多い。他の3カ国ではほとんど回答されていないフリーターの比率が高い(16.6%)ことも中国の特徴である。韓国の高校生は、建築家、教師、企業の経営・管理職、公務員の希望が目立って高い。一般事務職や大学教授、エンジニアへの希望も4カ国中最も高い。それに対し、医師、法律家、自ら起業といった米国、中国で高かった項目での選択率は低い。
●日本の高校生は、何より全般的に希望の水準が低いのが特徴である。複数回答の職種項目選択率を単純に平均すると、米国の11.8%、中国の14.7%、韓国の15.1%に対し、日本は8.3%と低い。警察・軍人、スポーツ選手、自ら起業といった米中韓では比較的希望の多い職種でもきわめて低水準である。実現可能性を考えて希望職種を絞っているのか、将来に希望を持てない状況なのか、気になる数値である。
●日本の場合、全体的に選択の比率が低い中にあって相対的に比率の高い職種が公務員である。
 
 
・職業選択にあたって影響力を持つ他者
●「母親」が最も多いのが韓国、「父親」が最も多いのが中国である。韓国では「メディア」という回答も突出して多い。米国では、父母の影響も大きいが、親以外の家族の影響も他国より大きい。日本の場合は、「先輩」以外のほとんどの項目で他の国々よりも比率が低い。
 
 
・職業選択にあたって重視する要素
●職業選択にあたって重要視する条件や要素について尋ねた結果、各国とも「適性や好み」を最も重視している点で共通していた。また、「安定性」や「仕事の環境」「収入」「能力の発揮」といった項目も、おおむね共通して高い。
●国ごとに見ると、米国では「福利厚生施設」が他の3カ国に比して突出して多い。「社会貢献」や「自由度」「挑戦性」も他と比較して高率である。しかし「勤め先の知名度」はきわめて低位である。中国は各項目とも重視する度合いが相対的に低いが、唯一、「社会的地位」だけは他の3カ国より明らかに高い。韓国の場合は「適性や好み」「能力の発揮」「勤め先の知名度」の3項目が、4カ国中最も高くなっている。中国同様「社会的地位」も高率であり、両国とも職業のステータスを意識する傾向があることがわかる。
●日本の高校生は、中国同様どの値もそれほど高くない。「安定性」や「仕事の環境」そして「収入」で2位であるのを除き、他は3位または4位と低い
 
 
・働く目的
●働く目的に関しては明確な国ごとの違いを見ることができた。米国の高校生では、全般的な選択率の高さが目につく。中でも「人に尊敬されたいため」は、日中韓の3~9倍にも達している。仕事に(ピューリタン的ともいうべき)積極的な意義付けをする文化的背景がうかがえる。
●中国の高校生では、「家族の幸せのため」「自己実現のため」という個人的な目的の選択率が高く、社会的目的の選択率はそれほど高くない。
●韓国は、全般的に目的意識が低位である。特に、社会的目的である「社会に役立つため」と「人に尊敬されたいため」の2項目では、どちらも選択率が10%に及んでいない。
●日本の高校生は、個人的目的についても社会的目的についても中間的である。全般的に目的意識は米国ほど高くなく、個人的目的意識は中国ほど高くなく、また韓国の高校生ほど社会的に醒めた態度もとらないという数値であるといえる。
 
 
・「偉くなる」ことの意味
●「偉くなる」つまり社会的ステータスが高まることについてどのように考えるかを見ると、米国の高校生は「責任が重くなる」「尊敬される」「能力の発揮」など概してポジティブな項目を多く選択し、偉くなることを肯定的に捉えていることがわかる。反対に選択率が低いのは「人に頭を下げなければなれない」や「友達が多くなる」「異性にもてる」など、周辺的な人間関係に関する項目である。
●日本の高校生は「能力を発揮」や「尊敬」「友達」といったポジティブな項目をあまり選択していない。逆に「責任が重くなる」「時間がなくなる」「人に頭を下げなければなれない」といったネガティブな項目の選択率はそれほど低くない。そうした結果からは、「偉くなること→負担、自己犠牲」といったイメージや、「苦労してまで偉くなることはない」といった醒めた意識が定着していることを垣間見ることができる。
 
 
・将来の人生観、など
 ●「人間は人生目標がないと暮らしてゆけない」という項目の肯定率を国ごとに見ると、中国が最も高くなっている(85.7%)ことがわかる。しかも、その値は6年間で7.4ポイント上昇している。それに続くのが韓国で、6年前からすると11.2ポイントも上昇して84.1%に達している。米国の高校生の肯定率も高い。それらに対して、日本の高校生の肯定率は相対的に低く64.1%にとどまっており、6年間の変化の幅も小さいことが見て取れる。
●「やりたいことにいくら困難があっても挑戦したい」の項目でも、日本の高校生の肯定率は低く、しかも6年前の値からも低下している。もっとも、肯定率の低下は米国と中国でも見られることであり、逆に上昇しているのは韓国だけである。「のんびり暮らす」のトップは、日本ではなく韓国になった。
●6年前には日本が最も高かった「結果の正否は考えずに、やってみることが大切だ」の項目についても今回の調査では中国に次ぐ2位となった。増加したのは中国のみで、韓国も米国も肯定率を減じている。
 
 

就きたい職業にお国柄がでている。