Geogami’s blog

日々の身の回りの出来事を中心に、 キャリア教育・地理教育 アクティブラーニングなどの教育方法 ICT等の話題を綴っています。

動画を作成しながら考えたこと。

「その場しのぎ」ではなく「『次の学び』に繋げる為に」

コロナ休校で日本でも新しいツールを使った教育が急激に広がっている。

しかし、今まで諸外国に遅れをとってきた日本の教育現場、もう何周の周回遅れなのだろうか?

 

 この分野に関しては当然世界の教育を推進している機関にはある程度の原理原則・基本情報が集約されているわけで、国内で未知の壁にぶち当たっている我々が参考にしない手はない。

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「情報のテクノロジー
OECDの教育研究革新センター(CERI) http://www.oecd.org/education/ceri/ 
OECDによる「イノベーティブな教授と学習研究」Innovetive Teaching and Leaning (ITL)

 

 動画の配信や相互支援の遠隔授業といったテクノロジーによって支えられる

教授や学習の効果ってどうなのか?

 

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 前提として、まず人の認知処理の特色を意識しておきたい。人の認知処理は「感覚記憶」「作業記憶」「長期記憶」の3種類からなる。これらのチャンネルを活用すれば効果的な学習が組み立てられるはずだ。

 しかしここで注意しておきたいことがある。人には「容量の限界」があるという事だ。人は各チャンネルで同時に少量の素材しか処理できない。集中できる時間もせいぜい15分くらいだろう。様々なチャンネルを多用して大量に情報を送りつけても人間はそれほど沢山の情報は処理できないのだ。

 「認知科学」の知見から得られた人間の学習の特性として、「二重チャンネル」(言語素材と映像素材を処理する時に別々のチャンネルを用いること)が有効とされている。

 動画を作成する場合「言語情報」・「文字情報」・「画像」・「動き」をシンクロさせる。ライブの教室にいる事ができなくても「活動的な処理」(学習者が学習の過程において適切な認知処理)をしているのならば意味のある学習が生じるはずだ。

 

 「本質的な学習デザインのための原則」
・「分割の原則」複雑な学習素材を分割して順に示す。
・「事前練習の原則」冒頭で授業の主要な概念の名称や特徴・ねらい・準備を示す。
・「様式の原則」学習内容によって視覚や聴覚、言葉の多様なチャンネルを用いる。

 

 「生成処理を行う効果的な教授法」
・「マルチメディアの原則」上にも挙げたが、言葉だけで無く図や絵を用いる。
・「個別化の原則」形式的な言葉より口語調の言葉を用いる。

※動画も公式な授業であるという印象を持て接してもらうため、挨拶と服装は大切。

  (↑動画を作りたいと言う同僚には最初にこのことを伝えている。) 

 

 動画が効果をあげるために気を付けていること。 
・「一貫性の原則」無関係な素材・情報を減らしなるべくシンプルに。
・「シグナリングの原則」本質的な素材を最も目立たせる。
・「冗長性の原則」ナレーション付きの場合は字幕を加えない。
・「空間近接性の原則」対応する画像の知覚に活字を置く
・「時間接近性の原則」ナレーションとアニメーション(画像)を同時に示す。

※「心地よい」・「愉しい」が大切なので普段よりハイペースハイテンション!

 

 ICTという新しい学びのチャンネルを活用する中で、受講する側もコンテンツだけでなく賢い生徒は提供側のスキルに気づくかも知れない。この部分は教室のライブだけでは学べない。

 学習者が学校卒業後学習を続ける上で新しいテクノロジーを活用するスキルは今後ますます大切になる。OECDの教育に関するページは、A.I.生涯学習の関係で「A.I.に何をさせるかを考えるのは人間の仕事」と述べている。

 

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 ※教科の目的と本時の目標を繰り返し流す。

 

これから・・・これは教育だけに限られたことではない?

 コロナ後もテクノロジーを活用した「課題解決」はますます加速するだろう。「課題解決の仕事」はますます大切になり解決技術として「『AIが苦手なこと』『得意なこと』『人間にしかできないこと』『人間にはできないこと』の間で相互作用」が進むだろう。その隙間や周辺で活躍する人材が求められるだろう。

 人間の側では「より良い未来」をイメージして、自分らしく自分を生かし、今まで以上に「解決策はきっとあるに違いないと思って学ぶ姿勢を持ち続ける」タフなハートがますます大切になるのだろう。