オランダの心理学者A. デ・フロートは
長年チェスの熟達者(チェスマスター)の研究に携わって
「熟達者(エキスパート)」と「そうで無い人」の違いを探った。
エキスパートはある課題を見た時に
「見えた」⇒解けるという反応をする。
図形を見立てる→視覚表象がエキスパートと一般の人は違うらしい。
「見えた」⇒解けるという反応をする。
図形を見立てる→視覚表象がエキスパートと一般の人は違うらしい。
(表象=人の心の中にあるもので、外からは見えないが本人には活動としてもとらえられる、視覚的・聴覚的なもの。)
エキスパートは課題解決のキーになるポイント、必要となる部品を見て取る、
そしてそれを、名前をつけて呼んだりする事が多い。
この見立てがエキスパートは非常に速い。
エキスパートは特に計画は立ててない→
慣れてくれば慣れてくるほど、
本人もどうやって解いているのか分からなくなっていたりする。
計画ができたところで解がでていてもう解いていなかったりもする
エキスパートは
→計画が立ったところでもう解いたも同然と考えている場合が多い。
研究によると
チェスマスターの強さは「思いつく手筋の良さ」によるもので、
沢山のパターンを知っていて検索している訳ではないという。
その強さは「即座により優れた質の高い手筋を思いつける」事にあった。
ではどうやって「手筋」を思いつくのだろうか?
そこには「見え方」が関わっている。
瞬間的に抽象が知覚によって置き換わることが大規模に起こるらしい。
「意味のあるパターン」(表象)が「見える」事に依存している、
そこにあるのは認知過程の中に成立した「表象」だ。
蓄積されたデータを元に検索処理を行っていくコンピュータには
碁盤の上に「意味のあるパターン」を見る事はできない。
つまり、碁盤の上の「パターン」に対応する
「表象」を瞬間的に構成することができない。
きっとそのときには並外れた「集中力」が必要なのだろう。
こういった
「専門家の持つ優れた能力」に関しては
’How People Lean’に6個の原則が示されている。
①専門家は初心者が気がつかないような
特徴や有意味な情報のパターンに気がつく。
②課題内容に対する膨大な内容知識を持っており、
それらの知識は課題に関する深い理解を反映する方式で体制化されている。
③専門家の知識は有る特定の文脈の中で活用されるもので、
特定の状況に「条件付けられた」ものである。
④専門家は注意を向けることなく、
知識の重要な側面をスムーズに検索できる。
⑤専門家は専門とする分野を深く理解しているが
他者にそれを上手く教えることができるとは限らない。
(できるのだがそれがなぜできる様になったのか本人にも分からない。)
⑥専門家が新しい状況に取り組む際の柔軟性には様々なレベルがある。
ここでの、専門家の持つ「知識」とは、
単なる対象の構造に対応する「静的」な存在ではなく、
問題の解決に結びつくように使えるかどうかという「動的」な存在だろう。
「対象の本質」が見えて、「問題の解決」に繋がるためには、
単に「モデル」が存在するだけでなく
「活用」される存在になることが重要だ。
そういった意味で「活用できる知識」を持つこと
そのために「知識を使うこと」が重要になる。
様々な角度から眺めてみたり
集中したり
活用したり
授業の中でも、こういった機会が増やせればきっと有効なのだろう。
台風一過