Geogami’s blog

日々の身の回りの出来事を中心に、 キャリア教育・地理教育 アクティブラーニングなどの教育方法 ICT等の話題を綴っています。

指導主事訪問で公開研究授業

県の指導主事訪問があったので

公開授業を行った。

(見学は新型コロナウイルス感染予防の観点から、校内教職員と事前に参加を希望された県内教職員とした。)

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今回の授業のテーマ

 

「身近な地域の一次産業を見つめ、より良い自分と社会の物語をつくる授業。」

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概要
 「身近な地域を見つめ、より良い自分と社会の物語をつくる。」ことを目的に授業を行った。具体的には「一次産業を学んで地域活性に繋がるアイデアを15文字以内で呟け。」という課題を設定した。「なぜ『15文字」なのか?」という質問を最初に受けると思うのでここで説明しておきたい。広告業界で製作されているキャッチコピーの理想は15字以内、現代はWeb全盛の時代であり、日本人の2割が使っているYahoo!の検索サイトや検索結果で示されるタイトルはたいていこの文字数だからである。(最も使われているGoogle社の場合はインデックスの表示がない) 今回、生徒が取り組むMissionにはアクティブ・ラーニングの基本原理である4点、「力を合わせること」・「チームで学ぶ事」・「落ちこぼさないこと」・「新しい価値をつくる事」を盛り込んだ。※

 

 一次産業は通常系統地理において農業、林業水産業の3つに細分化され、関係性を考察する機会は少ない。しかし、一次産業は身近な環境を守り、地産地消地域活性化の要になっている産業である。
 身近な地域の事例を通じて、系統地理分野で学んできた自然に関する知識と産業を繋げ立体的に理解する教材としては最適である。「一次業にかかわる知識理(Mission1)→「知識の構造化」(Mission2)→「テキスト化」(Mission3)→「振り返り」(Mission4)という流れ。

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 RESASにより地域の実態を数値で提示。

 その後、既習事項を簡単な質問で復習してからスタート、キーワードをもとにシンキングツール(ベン図)で知識を整理、クリエイティブな作業に移行するという筋書き。

 アクティブ・ラーニング(主体的で対話的な深い学び)の手法(ここでは簡易的ジグソー法)とシンキングツール(三要素のベン図)、さらにICT (Loilo Note for School)、表現に関するマイクロ・ルーブリックを活用し授業の流れを誘導した。

 「自分たちの未来」を推測する「本質的な問い」への気づきも期待する。

 高校生という時期は自分の進路を探る時期でもあり、進学・就職に伴い生まれ育った郷土を離れることになる生徒も多い。自分を育んできた地域に関して理解を深めるということは「国家の有意な形成者」としても「地球市民」としても不可欠な資質である。

 今後、学習を進めていく上でも自然環境の特性に対する理解の深化は災害に対してはもちろん、産業や資源エネルギー・都市の立地・水・食糧・風俗・習慣といった社会環境の理解や地域理解にも繋がるってくるだろう。
※ 国際協同教育学会(IASCE) 台北大会「東アジアと世界の協同学習:卓越性の獲得と持続」

 

1 単元名
 「農林水産業」(全21時間)

 

2 生徒

 2年生理系、地理選択の集団。普通科クラス

 「言葉」を暗記するといった能力は高いが、

 それを表現したり、活用したりするところまでは至っていない。

 そこで今回は構造化・活用・表現さらに省察まで体験させて

 学習の深化を狙ってみた。

 

 第Ⅱ編「現代世界の系統地理的考察」に関して、第1章の自然環境は履修済み。

 第2章資源と産業は主に2学期より履修している。

 ICTの活用に関しては生徒のBYOD(生徒持参の端末を使うこと)によって

 1人一端末の環境を構築している。

 

 3 単元の目標
 学習指導要領解説によると、①系統地理的に考察する大項目であることから,自然地理学,人文地理学の領域やそれらの領域における成果を考慮する必要があり、②そうした成果を基に,現代世界の諸地域の多様性をとらえる上に必要な基礎的・基本的な知識や概念を体系的に習得できること、③高校生が関心をもったり,諸資料を収集,選択,処理したりして系統地理的に考察することのできる学習内容が用意できること。以上の様なポイントと「実際の指導にあたっては,知識や概念を単に覚え込む学習に陥ることのないよう,留意する必要がある」と明示されている。
 今回の実践では、系統地理として原理を理解し、日本の一次産業に関する考察を行い、得られた知識を自分の言葉で構造化、言語化すること、さらにその知識を活用し主体的な行動に繋げてみる試みを行った。

 

 4 単元の評価基準
 「評価」は単にテストの善し悪しではなく、「付けようとしている学力」に対する尺度である。21世紀にふさわしい「答えのない問い」に挑戦していくためには従来の評価の尺度以外にも多様な評価のあり方が必要である。

 地理は「自然と人間の関係」を考える科目であり、地理教育は、「他人との関係性、社会との関係性、自然環境との関係性を認識し、関わり、つながりを尊重できる個人」を育む持続発展教育(ESD)の一翼を担っている。現代世界の諸問題を知り、その解決法を考えていく科目の一つである。自然環境と社会文化の相互関係によって作り出された地球上の諸事象の現状を理解させたい。
 「なぜそれはそこにあるのだろう?」から始まる、多面的・多角的に考察する力や、「本来それはどこにあるべきものなのか?」という理想から、考察,構想した結果,その、「違和感」に気づき、そのあるべき姿へ近づけていく力を獲得し、持続可能な世界の構築のために課題の解決に向けて,複数の立場や意見を踏まえて自分→学校→地域・社会→国家→世界と構想する力を育みたい。

 

   本時の評価規準及び評価方法 

 本校が特別な研究指定を受けている訳ではないので現行の旧学習指導要領の範囲内で評価をしなければならない。そこで、今回試みたのは、この枠組みの中で新課程における評価規準も視野に入れながら、認知科学における熟達のプロセスとICTを活用した評価である。 

 

関心・意欲・態度

思考・判断・表現

資料活用の技能

知識・理解

①予習やふり返りに取り組んでいる。②課題に主体的に取り組んでいる。③自分のより良き「選択」に対する考え方と理由を説明できる。

①現象の方法や立地を科学的・理論的に説明できる②図やグラフに表現できる。③言語により適切に表現できる。④より良き未来を提案できる。

①図やデータをグラフを読み取ることができる。②テキストを読み取ることができる。③適切なコミュニケーションがとれる。

①地理用語の理解。②必要な情報を選択し活用する準備ができている。③地域の特性を理解してる。④産業間の関係性を理解している

 

 本時の評価規準及び評価方法

 

関心・意欲・態度

思考・判断・表現

資料活用の技能

知識・理解

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 評価規準

 

 

 

 

 

 

 

 ①郷土の自然環境と一次産業について関心を持つ。②主体的に予習とふり返りに取り組んでいる。③楽しく新しい価値や問いを生み出そうとしている。

①自然・地形の特性を科学的・理論的に説明できる。②図やグラフに表現できる。③※ルーブリックに従って言語により適切に表現できる。④俯瞰的・論理的思考ができる。

 

①図やデータ・テキ

ストを読み取ること

ができる。②ICTを

活用して情報を収集・交換できる。③資料を活用してコミュニケーションを図る。

①地理用語を理解している。②地域における人と自然の共存のあり方についての例を挙げられる。③産業間の関係構造を理解している。④知識の集積・構造化・整理・調整・統合化をしている。

 

「問う」、「振り返る」、「試みる」、「生む」、「たのしむ」

「選ぶ」、「組み立てる」、「辿る」、「表わす」、「見通す」

「読み取る」、「見つける」、「集める」、「学び取り助け合う」

「集める」、「組み立てる」、「比べる」、「囲む」

Mission1

 

Mission2

 

Mission3

 

Mission4

 

 

 

※言語活動部分「文章作成」に関する「マイクロ・ルーブリック」による評価を行った。

      文章表現に関するマイクロ・ルーブリック (生徒には事前に提示している)

 

学習活動

 

評価基準

 

 

◎ [3点]

Excellent

 

〇 [2点]

Good

 

△ [1点]

 Fair

 

× [0点]

 Poor

 

 

 

 文

 

 章

 

 の

 

 作

 

 成

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

読み取る力

(地域活性化)

 

□問題の要求を正確・適確に捉えている。

□問題の要求を捉えている。

 

□問題が求めているものとはズレている。

□問題が求めているものではない。

 

□地理用語が使えていない。

 

 

知識の活用

(地域の特性)

 

(産業間の関連)

 

□地理用語を正確に理解して活用している。

□地理用語を活用している。

 

□地理用語を間違って使っている。

 

□地域の特性・メリット・恵みを挙げている。

□地域や産業間の関連性がある。

 

表現力

(プロデュース)

 

 

□漢字等の表記が完璧で効果的。

□指定された字数以内

□漢字等の表記をしている。

□指定された字数の±2割

□漢字等の表記にミスあり。

□指定された字数の±4割

□漢字等の表記ができていない。

□指定された字数の±5割

 

 ユニークさ

  ・発想

 

□ユニークで明るく進歩的。

□地元への愛情が感じられる。

□多面的・多角的視点に立っている。

□相手(市場・消費者→ペルソナ)に訴える力がある。

※その他

 

□良い点(                     )

 

     ※教師・生徒の予測を超えている優れた内容に最大3点加点する。

参考「ルーブリック」について。ルーブリックは採点ツールでもありガイドでもある

 

ルーブリック利用について

     メリット

 

     デメリット

 

 

  学生

 

 

 

 

・どの様な観点で評価されるか 分かる(作成ガイドになる)

・自己採点できる

・評価が納得できる

・丁寧なフィードバックが期待できる

・最大の評価基準以上(教員の想像を超えたものが出にくい)

・上手くつくられていないとルー

ブリックに満たされた観点以外が出てこない、そこにとらわれてし

まう。

 

  教員

 

 

 

 

 

 

・採点が早くなる

・丁寧なコメントが可能

・良いルーブリックなら共有できる

・採点のブレがなく揺らぎ無く公平

・客観的に評価できる

・課題の意図を伝えやすい

・ルーブリックの作成に時間がかかる

・ルーブリックを評価するための「グランドルーブリック」が必要であり、教師間で話し合い共有する必要がある。

 

 

 

 

5 本時の指導と評価の計画 

時程

ねらいと学習活動

評価の観点

評価基準と評価方法

第一次(2時間)

●Mission1 地元の一次産業の資料作成。【ジグソー班→エキスパート班】

●Mission2 資料を参考にシンキングツールを活用して産業間の関連を整理する。

●Mission3 地域活性に繋がるアイデアを15文字以内でつぶやく。

●Mission4 本日学んだこと・連想したこと・発見したこと・感想・活動の振り返り。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●ワークシート資料の読み取り・発見・収集・学び取り・助け合い

抽出・構造化・比較・囲み・組み立て

見通し・辿る・表わす・俯瞰する・試みる・たのしむ

振り返る・問う・進む(ワークシートとLilo Noteの提出物)

 

 

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生徒の作品 センスが素晴らしい !

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 地域分析+一次産業の復習+ベン図での整理+コピーづくりという帳欲張りの50分

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 まずは「教師も生徒もたのしむ」というコンセプトは成功したかな。

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沼津の夕景 「6次産業化」への潜在力は大  未来を創る力は漲っている!?♡