I introduced a system approach to my geography lesson
「高校でのシステムアプローチ授業(地理)」
※ 日本の高校現場での実践トライ報告
英語版 → https://geogami.hatenablog.com/entry/2019/11/09/135030
授業開発の動機
環境問題や紛争など、もはや従来の秩序を再構築できない危機的状況である。
何か重大な出来事があってから学ぶのではもう対処できない。
(温暖化問題の解決はこの数年間が山だと言われている。)
「過去の経験に基づく行動様式の変化」という学習の定義自体が問われてきている。
環境問題、強国の対立、世界の分断、広がる格差、爆進する科学技術、次から次に押し寄せる難題全世界的な問題においては、過去に学ぶだけでなく将来にも学ぶという「先見性」が必要になってきている。
学習を「行動」に繋げるにはどの様にしたらよいのだろうか。
そのためには部分的な理解だけでは不足である。
「全体像」と「構造」の理解が必要となる。
『構造的理解』が重要になってくる。
※ ↑ 生徒が授業後に個人で作成したシート(作成は授業中10分程度+放課後の時間)
仮説
「メタ認知」が行動を誘う『潜在要因』を鮮明にし
『行動』が変わる」のではないか?
※ ↑ 参考にした ドイツの教科書
地理教育の手法の一つに 「システムアプローチ」という方法がある。
システム思考は部分ではなく全体を考慮するものの考え方を取り入れている。
問題を部分として捉えるのではなく
全体の構造を丸ごと捉え、お互いがイメージを持った上で、
対話によって解決策を探る。
課題解決に向かう実践では「レバレッジの原則」
(てこ→最小の努力で持続する深い意味改善に繋がる場所)
を使ってツボを押えた行動に繋げる。
これは国連の掲げているSDGsの思考とも親和性が高いと思われる。
※ 参考 システムアプローチの理論
https://geosysapp.jimdo.com/%E7%90%86%E8%AB%96%E7%B7%A8/
開発
学習会・学会・海外の資料等を参考に
現場実装のイメージで暖めてきた。
参考 https://geogami.hatenablog.com/entry/64829385
https://geogami.hatenablog.com/entry/64607646
https://geogami.hatenablog.com/entry/64903446
最初に感じたのは
日本の教育現場に海外の事例をそのまま導入する事は
難しいだろうという感覚
生徒数が40人
場所も特別な地理教室ではなく教師が移動して授業する
普通教室という限られたスペース
脆弱なICT環境(それでもプロジェクターとBYODのスマホ程度は使える。)
そして、外部模試や入試「でも」点が取れるという学力・進路保障との両立
それを成し遂げるための時間の制約の中での実践となった。
研究者からすると
この実践は亜流で正式ではないという指摘をいただくかもしれない。
しかし、地球環境問題を巡る事態は日々深刻化している
「教授法が完成してから」では遅すぎるのではないか?
日本の現場感覚からの実践例としての一歩を踏み出してみた。
今回の中心テーマは環境問題の「温暖化」(気温上昇)に絞ってみた。
※ 各班で作成したワークシート これをもとに最終的に個人個人でをシート作成
授業の流れについて
① ワークシート(関係構造図)を配布し、
今回の授業の主旨を説明する。
今回のテーマが「気候変動」→「温暖化」である事を告げる。(説明5分)
※ ↑ シートはLoilo note for schoolというアプリケーションで作成している。
左側が「利益」
右側が「損失」
上が人文社会経済など人間活動
下が土壌・水圏・大気など自然に関わる事項
シンキングツールを活用した。
「利益」と「損失」について
生徒達はこの授業で
日本の自然に関して学習済みである。
参照 「風土の恵みと損失」 ↓ https://geogami.hatenablog.com/entry/64885871
② 教師が提示したシートの中にキーワードが書かれたカードがある。
「大気圏」に関する要素は水色
「水圏」に関する要素は青色
「土壌・植生」に関する要素は「黄色」
「社会」に関する要素はレモン色
「一次産業」に関する要素は薄緑色
「経済」に関する要素は緑色
項目によってカードを色分けした。
しかし、項目に関しての「述語の部分」は記載していない。
ここから、活動の導入としての活動に入る。
(試合前のアップのようなもの)
生徒達はまず自分で「述語の部分」を補う。
この際既習事項の確認のため、
関係する教科書・地図帳・資料集・ノートのページは示しておく。
生徒たちの活動(5分)
→ ペアワークやグループで確認
(「述語」の部分を記入 各自 → グループ・ペア・個人 → 個人)
教室全体の活動(5分)
→ 教師が適宜loilo Noteのカードを一枚ずつ示しながら「述語を補う」
こうして完成したものが下の図。
③ 次の作業に移る。(15~20分は確保したい)
関係性を考えてカードを繋げてみる、さらに必要と思われるカードを追加する。
まず個人で考えてから、グループワークに移る。
グループワーク用にワークシートをポスター大に拡大しておく
(筆記用の太いペンなども準備しておきたい)
ここでの「対話」がこの授業でのクライマックスとなる。
グループは四人程度が好ましいが
(現実は40人、普通教室での実施となると10グループの活動場所の確保が難しいため
どうしても多めの班編制になってしまうだろう)
失敗もあった!
※ 筆者はこの授業を二度実施したが、
最初に実施した地理選択者18人では9人のグループ
二度目に実施した40人クラスでは作業用ポスターを貼る場所がないため
10人のグループで実施したため多すぎて失敗した。
普通教室で実施するにはポスターを小さくすれば良いが
教室全体でシェアできない(小さくて見えない)→ここが問題
ICTを活用すれば良いのだが
データのやりとりに時間がかかり50分の枠では終われない
(この先の個人ワークの時間がなくなる)
という事で妥協の産物だった。
普通教室で40人規模での展開ができない実践例は広まらないだろう。
生徒たちの活動に話しを戻す
④ 再度、生徒達は座席に戻り、各班で作成したポスターを見ながら
いよいよ各自でワークシートの作成に入る。(15分)
スタート時はとても難しいようなので
ヒントとして
位置・・・低緯度・中緯度・高緯度で各々どの様な問題がおこるか?
自然・・・地形・気候・植生・土壌などにどの様な影響があるか?
人文・経済・・・農林水産業・貿易・政治・人口・格差などの変化は?
といったアドバイスも加えた。
⑤ いよいよ各自が作成したワークシート(関係構造図)を提出!
筆者は方法として二つの選択肢を与えているがいずれもloilo Noteを活用する。
ワークシートを写真に撮って提出する方法と
loilo Noteのシンキングツールを活用する方法だ。
提出期限は次の授業での紹介を考え
次の授業日の前日 夜20:30までとした。
授業展開に時間の余裕があるならば後者を推奨したいところだが
現場ではその「時間の確保」が実際、教師・生徒にとって最大の課題である
そのため、授業の効率を優先した。
(何人かは後者で出してくれたが、スマホでの操作は少し手間どった様だ!)
提出されたものを担当としてチェックして(赤ペンやアンダーラインを入れた)
クラス内で「無記名」「解答を共有」という処理をしてシェア
(生徒達はお互いの作品を見ることができる状態にしておく)
3年生のクラス ほぼ全員が提出しているが・・・写真が縦になってしまっている!
2年生のクラス では写真は横にして提出する様指示を追加した。この日は45分で実施
約2/3程度の生徒が期限内に提出していた。
中にはloilo Noteのカードで解答してくる生徒もいた。
(結構作製に時間かかっていると思われる。)
評価
定量的な測定はしていないが
生徒たちの感想といった定性的な振り返りを簡単に取ってみた。
(loilo Noteのカードの2枚目としてワークシートと一緒に提出した。)
環境問題というと通常1つ1つの問題の解説→理解に終始する場合が多いが
この授業によって以下の様な認識を持つようになったらしい。
パフォーマンス評価としては
環境問題に関する課題の「論述」やワークシートの「関係構造図」に
「新技術開発」・「国際協力」・「戦争」・「地震」等の
新しい要素が入った場合を作図したり
生徒自身に「温暖化」に関する発問を「関係構造図」を活用して作問させる等
様々な工夫が考えられそうだ。
丁寧に進めるならば、事前→事後の形成的評価を考えても良い。
成果?
何を知っているか? → 何ができるか?
「地球温暖化」が多岐にわたる問題を引き起こし
解決しなければいけない重要な課題である事の認識は
深まったのではないだろうか?
深刻さを感じてくれたのではないだろうか?
生徒達は一歩前進にできただろうか?
まとめ・感想
本年度の「環境問題」に関する授業は2回の実施に留まったが
この分野は公民・保健・家庭科等でも扱うので
クロスカリキュラムでも実施出来るだろう。
地球市民として必須の項目
複数の教員がTTで実施してもおもしろそうだ。
40人での実施に関してはグループワークがひろびろできる
ゆとりあるスペースが確保できれば
4人組10班が理想であるし
時間があるならば
全体でのシェアは「ポスターツアー」なとの手法を導入するべきだろう。
今回は「地球的規模」で考察したが
ドイツの教科書では「ドイツ国内」での変化を扱っているため
「日本の場合」や「地元地域の場合」といった範囲で実施すると
より具体的になり、立体感が出てくるだろう。
※ あくまでも普通教室・40人・50分での1回限りでの実施で試みたという点を最後に記しておきたい。なお2回目の授業では県内外から御見学いただきましたこと文末に御礼申し上げる。