Geogami’s blog

日々の身の回りの出来事を中心に、 キャリア教育・地理教育 アクティブラーニングなどの教育方法 ICT等の話題を綴っています。

「自尊感情」とキャリア教育の目的

私たちは自分について考えることをかなり頻繁に行っている。
 「自我」の研究で著名なウイリアムジェームス(William James)は
 「私が何かを考えているときでも、
 私はそれと同時にいつも私自身、
 私の人格的存在を多少とも自覚している。
 また同時にそれを自覚しているのも私である。」
 と言っていて「自己」は常に認知の主体でもあり「対象」でもある。
 
 ところで、自己概念には二つの側面がある。
 個人が独自に持っている内的側面
 →個人的アイデンティティー(personal identity)と
 
 社会集団のメンバーを通じて形成される側面
 →社会的アイデンティティー(social identity)
 
 この二面が自己概念を形成している。
 自分にとって影響を与えてきた他者
 たとえば親や教師は重要他者であり、
 親の前では「よい子」でいるように
 その人の周囲ではその人によって作られた「自己」を演じようとする。
 
  「自尊感情」って何? 

 このように「自己」に関して人は
 「自己知識」(個人的personal identityと社会的social identity)
 の両側面がある。
 
 そして、それをどう思いどのように評価するかといった
 「感情」(「Self-Esteem」自尊感情)
 「評価」(Self-Evaluation)自己評価の二面がある。
 
 (普段「感情」と「評価」についてはあまり区別していないが・・・)
 
 「自尊感情ってどうやって生まれるの?」→「社会的比較」ものさしと相対化

 評価の基準・・・ものさしはどこから? →他者と比較によって行う!
 
 自分より能力が高い、すごい人と比自分を較すると・・・
 自分の欠点や不足しているものを発見する
 →自尊感情を低下させてしまう。

 自分よりも能力が低い、たいしたことない人と比較
 →自己高揚動機が得られる。
 
 (この結果、自尊感情が低くて落ち込んでいる人の不快感は解放される。)
 
 他者と自分を比較する時に関係するのは
 三つの要因。(落ち込む例)
①他者と自己の身近さ(身近なあいつでもできている!なのに自分は・・・)
②当該の課題や活動と、自己との関連性
 (自分にとって大事な分野でしかも・・・)
③自分と他者の遂行の相対的認知
 (自分のパフォーマンスと他人との差が歴然!)
 
だから
①あいつと俺は違う
②その分野は自分にとって大して重要ではない
③まだ大して差は無い
 と思い込むことでバランスをとろうとする。
 
 日本の高校生が自尊感情が低いのは・・・
 
 →①均質で多様性を認めていないので
  あの人は自分と違うからと納得できないから?
  ②また日本では評価対象となる活動が少なく狭いから?
  ③評価に関しては「結果」(総括的評価)だけだから?
 
ポジティブイリュージョン(Positive illusion)

 普通人はたいてい自分の身近にいる人の中で
 自分を平均以上と思っている!
 
 人には一般に自分を過大評価する傾向があるから
 逆に言うと「自分に自信が無い」抑鬱の人は
 実は「世間をしっかり相対化してみている!」とも言える。
 (実は悲観的に見ているのではない)
 
 人は誰しも自分こそが偏り無く世界を見ていると強く信じている。
 だから間違っているのは相手だと思ってしまう。
 
 キャリア教育との関係
 「キャリア教育」の目的が「幸福」ならば・・・
 「幸福度ランキング」の国際比較が以前流行った。
 
 「幸福度」の高い国として
 ブータンの例などは置いておいて
 先進国ではたとえば「デンマーク
 デンマークの人々の価値観の根本にあるのが、
 「Jante  Law」
 
 多文化主義に基づく平等の理念
 
 1. Don’t think that you are special. 
 自らを特別であると思うな
  2. Don’t think that you are of the same standing as us.
 私たちと同等の地位であると思うな
  3. Don’t think that you are smarter than us.
 私たちより賢いと思うな
  4. Don’t fancy yourself as being better than us.
 私たちよりも優れていると思い上がるな
  5. Don’t think that you know more than us.
 私たちよりも多くを知っていると思うな
  6. Don’t think that you are more important than us.
 私たちよりも自らを重要であると思うな
  7. Don’t think that you are good at anything.
 何かが得意であると思うな
  8. Don’t laugh at us.
 私たちを笑うな
  9. Don’t think that anyone of us cares about you.
 私たちの誰かがお前を気にかけていると思うな
10. Don’t think that you can teach us anything.
 私たちに何かを教えることができると思うな
11.  Don’t think that there is something we don’t know about you.
 私たちがお前について知らないことがあると思うな
 
アクティブラーニングを通じてキャリア教育をすすめるなら
 「自己肯定感」を上げることと「自尊感情」を上げることは別
 
イメージ 1
 
 
 
 スーパーがいっているように
 進路を決めるときには「自己肯定感」は必要だ
 しかし
 幸福論に沿って考えてきたとき
自尊感情が低いから上げよう」という考えはおかしい
 それは
 相対的な「勝ち負け」の世界の中での発想だから、
 キャリア教育の
 目指す方向は新しい社会の概念であり
  現状の中では致し方ないけれど
 「自尊感情」を上げることは目的ではなく
 「他人の価値も自分の価値も平等に見ることができる人間」
 を育てることこそ目的だと思うのだけれども?
 
このあたりについてずっと綴ってきたこと。↓
 
 
 世界スケールで見た「キャリア教育」
 http://blogs.yahoo.co.jp/suzukifamilyeiji/63565047.html
 
 
  幸せについての授業例
 http://blogs.yahoo.co.jp/suzukifamilyeiji/62590171.html
 
 椅子取りゲームでなく新しい椅子をどう生み出すか
 「キャリア教育」でなく「キャリア協創」